マーク短歌めくり集

しなののうた杉田白百合

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季節の移り変わりを感じながら、あるいは旅行先の風景の向こう側を見つめながら、そしてたどってきた道を思い起こしながら。 信濃の国、善光寺平から、生活感溢れる短歌が続々届きます!

写真は善光寺雲上殿納骨堂(上)と善光寺(下)善光寺

善光寺

中欧の旅(ドナウ川)

大寒の夜空にかがやくオリオン座 際立ち光るを亡夫と定む

「冬の夜空 1」 (2012.2.4)

初詣の帰路に買いくる濁り酒 わが手捻りのぐいのみに満つ

「新年を寿ぐ 2」 (2012.1.19)

脈脈と月日重ねて元旦の輝きを増す山の端見つむ

「新年を寿ぐ 1」 (2012.1.5)

形見なる母の作りし綿入れを初下ろしするわれ七十五

「冬の訪れ 2」 (2011.12.4)

落ち葉焚き焼き芋頬張る子ら見えず ここにもありし原発の影

「冬の訪れ 1」 (2011.12.4)

二十体の聖像ならぶカレル橋 安泰祈り像に触れたり

「中欧五カ国の旅 4」 (2011.11.15)

中世の名残り漂うプラハ城 わが視線射る尖塔五つ

「中欧五カ国の旅 3」 (2011.11.3)

ベルリンの壁もなくなり東西の往来激しトラックを見ゆ

「中欧五カ国の旅 2」 (2011.10.18)

すいすいとドイツとチェコの国境も検閲あるは遥か遥かに

「中欧五カ国の旅 1」 (2011.10.11)

ちりりんと風鈴鳴らす秋の風 鈍き頭に風穴を抜く

「夏の終わり 2」 (2011.9.30)

缶ビール一本空けて仏前で夫を迎うる今日は盂蘭盆

「夏の終わり 1」 (2011.9.22)

浅草のほおずき市に出会いたり売り声高く風に乗りくる

「東京スカイツリー 2」 (2011.8.31)

競い合い世界一とうスカイツリー霊呼びて哭く声聞こゆるか

「東京スカイツリー 1」 (2011.8.13)

線太き棟方志功の版画絵に般若おもわす像迫りくる

「名画に浸る 2」 (2011.7.27)

モネ描く「積み藁」の絵に導かれ足袋を繕う母浮かびくる

「名画に浸る 1」 (2011.7.15)

ゆうゆうと鴨の番が遊びたる明神池に贅のひととき

「上高地散策 3」 (2011.6.22)

上高地を10キロ歩き待ち受ける白骨の湯に解れゆきたり

「上高地散策 2」 (2011.6.15)

聳え立つ雪渓迫る穂高岳 河童橋にて目を見張るなり

「上高地散策 1」 (2011.6.8)

花を賞で小田原城を埋め尽くす笑顔かがやき声跳ね上がる

「箱根遊山 3」 (2011.5.26)

ほとばしる湧き水ありて掬えれば のどみにしみて身を貫けり

「箱根遊山 2」 (2011.5.11)

幾曲がりスイッチバックを重ねつつ箱根登山の列車に揺るる

「箱根遊山 1」 (2011.5.7)

何一つ予測だにせず襲いきし地震・津波と福島原発

「東北関東大震災 3」 (2011.4.26)

去年訪えし釜石港の無気味なるがれきの山に身の竦みたり

「東北関東大震災 2」 (2011.4.7)

おろおろとただおろおろと10日間 地震はわれを虜にしたり

「東北関東大震災 1」 (2011.4.1)

ちょうちょうと流れる水の軽き音 白波たてて春の声聞く

ちょうちょうと流れる水の軽き音 白波たてて春の声聞く

「春一番 3」 (2011.3.24)

目の前をのそりのそりとゆく猫の移りてくるか我ものそりと

「春一番 2」 (2011.3.14)

わが海馬をくすぐりすぎる春一番 心騒げる甘きささやき

「春一番 1」 (2011.3.7)

拍子木をたたく響きが大寒の夜のしじまに冴えゆきわたる

「大寒 3」 (2011.2.19)

母つくる半纏着ればぬくぬくと凍てし心をふんわり包む

「大寒 2」 (2011.2.9)

人みなが身の竦めおる大寒に凍土を突きてチューリップの芽

「大寒 1」 (2011.1.31)

覗くたび別の世界に引き込まれ目眩むがの不思議な鏡

「元日詠 3」 (2011.1.24)

御祓いを受ければ神が宿るがに髄まで穿ち初心にかえる

「元日詠 2」 (2011.1.13)

空洞に張らるる注連縄しめやかに気の漂える欅の大樹

「元日詠 1」 (2011.1.9)

焼き芋を両手で頬張る園児らの熱さこらえる手が踊りだす

「師走寸描 3」 (2010.12.27)

落葉掃く老いの背中に小春日が戯れ射せる師走のひと日

「師走寸描 2」 (2010.12.20)

かたことと機織る音の聞こゆがの母を連れくる木枯らしの夜

「師走寸描 1」 (2010.12.14)

並べうる器に蜻蛉とまれおり我関せずと日向ぽっこす

「益子の大陶器市 3」 (2010.12.8)

店前の五メートルの大狸化かされぬぞと財布を締めり

「益子の大陶器市 2」 (2010.11.17)

陶芸の郷といわるる益子には陶工たちの気迫が満ちる

「益子の大陶器市 1」 (2010.11.08)

目を凝らし石垣に見る光苔仏の照らす光にも見ゆ

「千畳敷カール 3」 (2010.11.03)

はるなつは花の苑にて盛るるも千畳敷は草紅葉なり

「千畳敷カール 2」 (2010.10.21)

たちまちに山覆われて目の前に怒涛のごとく霧の迫りき

「千畳敷カール 1」 (2010.10.10)

久々の雨に打たれる向日葵の息づくさまに我も息づく

「猛暑 2」 (2010.9.28)

ひぐらしと鈴虫鳴ける夕べにて季の移ろいを幽かに覚ゆ

「猛暑 1」 (2010.9.14)

雷鳴の轟く窓辺に立ちおれば背を貫きて閃光はしる

「夏を拾う 4」 (2010.9.6)

野辺に咲く名もある花もなき花も賞でゆく人の穏やかに見ゆ

「夏を拾う 3」 (2010.8.24)

雑草の茂れるままの廃屋に天を仰ぎて向日葵の立つ

「夏を拾う 2」 (2010.8.9)

雷鳴の閃光はしる窓にいて悪魔の駆ける天を眺めり

「夏を拾う」 (2010.7.28)

エジプトの絵模様踊るスカーフを透き過ぎゆきぬ葉桜の風

「エジプトに馳せる 2」 (2010.7.15)

ピラミッド謎多ければ惹かれふく馳せる心は早やエジプトへ

「エジプトに馳せる 1」 (2010.6.19)

境内の池面に浮かぶ花筏鯉も見るらし筏揺らす

「初夏に感じる 2」 (2010.6.5)

親が子に譲るを倣い名付けしとゆずり葉という教えられたり

「初夏に感じる 1」 (2010.5.17)

完成は百年後とうガウディの見上げる塔に人影を見ゆ

「スペインの旅 4」 (2010.5.7)

ゴヤ描く「裸のマハ」の前に立ち去り難かりしプラド美術館

「スペインの旅 3」 (2010.5.3)

名画なるベラスケスの絵に立ちん棒駆け足で過ぐプラド美術館

「スペインの旅 2」 (2010.4.23)

スペインは世界遺産の豊庫にて古に馳す宮殿巡り

「スペインの旅 1」 (2010.4.15)

のうのうと足を投げだし野良猫の欠伸に注ぐ日射しのやわし

「しなのの春 2」 (2010.4.7)

春日浴び親子で飛ばす紙飛行機広場に高く声の広がる

「しなのの春 1」 (2010.4.7)

連翹の黄があまりにまぶしくて惑えるわれをさらに惑わす

「春の兆し 2」 (2010.3.19)

雪解けの水が川幅膨らませ目を皿にして渦巻きの過ぐ

「春の兆し 1」 (2010.3.9)

公園に遊ぶは鳩と鴉のみ自由自在に闊歩しており

「立春のころ 2」 (2010.2.19)

立春と聞けばからだが軽くなり日脚も延びて街に向かいぬ

「立春のころ 1」 (2010.2.12)

逆転の笑みのこぼるる浅田真央十九歳の貌のぞかせて

「氷上の舞 2」 (2010.1.31)

製氷のあとに滑れる一本の白き筋あとリンクに光る

「氷上の舞 1」 (2010.1.29)

おみくじが枝垂るるほど結ばれて松の緑に白き花満つ

「元日詠 2」 (2010.1.13)

除夜の鐘遠くに聞きて目覚めれば去年は今年の時を刻めり

「元日詠 1」 (2010.1.10)

華やげる花火のあとの静まりに儚さつのる靴の音聞く

「秋深く 3」 (2009.12.31)

木枯しの吹くにまかせて散る紅葉絵模様のごと地面彩る

「秋深く 2」 (2009.12.27)

夕映えの空に吸い込む童謡の声に連なる柿の木の家

「秋深く 1」 (2009.12.8)

村里のおちこち柿の実たわわ生りふるさと恋し父はは恋し

「虫歌観音 3」 (2009.11.20)

幾年も経しか目鼻の定まらぬ笑める石仏苔生しており

「虫歌観音 2」 (2009.11.12)

信州の松代出身和田英の製糸工女の歩みを覚ゆ

「虫歌観音 1」 (2009.11.6)

森林の雨を集めて十和田湖は水を湛えて奥入瀬くだる

番外編「奥入瀬渓谷 2」 (2009.11.3)

雨上り奥入瀬渓谷歩きなば不意に栃の実頭を打ちし

番外編「奥入瀬渓谷 1」 (2009.10.30)

海鳴りのうねりも聞こゆ枕辺に潮の香りに包まれて寝る

番外編「竜飛岬 2」 (2009.10.24)

函館へ連絡船で渡りたる夢多き日の青春過る

番外編「竜飛岬 1」 (2009.10.22)

世に連れてさま変わりする秋祭り花火ひととき境内賑わす

「秋祭り 2」 (2009.10.20)

肩車される幼のもみじ手が父の背中でぽんぽん跳ねる

「秋祭り 1」 (2009.10.15)

寂れたる町は一夜に膨らみて人人人に埋れ尽くされり

「風の盆 3」 (2009.10.5)

哀調を帯びる越中おわら節風に流るる声の侘しも

「風の盆 2」 (2009.10.1)

坂の町八尾は九月一日を豊作祈る風の盆とう

「風の盆 1」 (2009.9.28)

北上川白波たてて流るるを車窓にながめ花巻へ向く

番外編 北紀行「中尊寺にて 3」 (2009.9.25)

高原のすすきの原を分け入れば女人結界の石碑のありて

「秋の気配 2」 (2009.9.10)

いつの間にセミの声絶えこおろぎの音色に秋の気配漂う

「秋の気配 1」 (2009.9.8)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

磨り減りし丸き石段登りつつ苔生す石に往事を偲ぶ

番外編 北紀行「中尊寺にて 2」 (2009.8.28)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

うす暗き堂塔覆う松杉に霊のおるらし重き風吹く

番外編 北紀行「中尊寺にて 1」 (2009.8.26)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

「ことばなき願い」 (2009.8.19)

上弦の月くっきりと祭りの夜 鉢巻法被が奏でる平和

「しなののいのり」 (2009.8.15)

諍いなどなき世を望み散策す青葉まぶしみ平和を覚ゆ

「なつのさかり」 (2009.8.11)

一山を占めるがごとく春蝉は尽きるを知らず鳴くを競えり

「しなののなつ 3」 (2009.8.7)

太陽と月と地球の織りなせる天体シヨウに言葉を絶す

「日食に立つ」 (2009.8.2)
「しなののなつ 2」 (2009.7.23)
「しなののなつ 1」 (2009.7.16)
番外編「みちのくの旅」 (2009.7.7)
「薔薇 2」(2009.7.1)
「聖山(ひじりやま)高原」(2009.6.28)
「薔薇 1」(2009.6.22)
「五月の頃」(2009.6.14)
「沖縄」(短歌新潮賞受賞作)より(2009.6.16)
「善光寺御開帳」(2009.6.14)
■杉田小百合 sayuri sugita

長野県飯山市生まれ。児童文学、女性史を学ぶ。短歌新潮同人。著書に「なくなったきょうかしょ」(ポプラ社)、「たっちゃんのたからもの」(あすなろ書房)。

短歌めくり集「しなののうた」