
経験豊富な花音は俺がしたことのないことも色々としてくれた。
「道具とか、何もないの?」
可愛い顔でなんとも大胆なことを言ってくれる。
すると花音は俺の携帯を手に取りリダイヤルから自分の番号にかけた。
震える携帯を手に悪戯を企んでいるような顔で俺に近づき、首元を舐めながら携帯を俺の太ももに当ててくる。
微かな振動が敏感なとこに触れ、手とは違った快感に襲われる。
行為をしている最中は夢中になっていたけど、セックスが終わり、いやらしい道具からただの通信機器に戻った携帯を見て、ある考えが浮かんでひやっとした。
もしかして、俺が花音に電話しているときもこういう使われ方をしていたりして……。
AVでしか見たことのない体位や、普通の口とは思えないようなフェラをされるたびに、どこで学んだんだろうとか、何人にこんなことをしたりされたりしてきたんだろうとか気になりだし、段々俺たちの、いや、俺の調子は狂っていった。
その点、花音はいたってクールだった。
俺にもたれかかる花音の吐息が首筋に当たりだし、俺は花音の肩を抱き寄せ軽くキスをする。
段々激しくなってきたところで花音の携帯が鳴る。
どれだけ感じていても、花音は俺を遮って携帯に出る。

「はい。はい……」
その冷静な受け答えを聞いていると、俺の盛り上がっていた気持ちと下半身は急激に冷めていく。
電話を切ると、花音は乱れだしていた洋服を調え、出勤の準備をする。
俺は行き場を失った性欲と一緒にため息を吐き出す。
「他になんかもっと方法あるんじゃないの? ……せめてキャバクラとか」
花音は手鏡を広げ、化粧直しを始める。
「そんなの面倒じゃん。飲みたくないときもお酒飲まなきゃいけないし、デリヘルのほ
うが手っ取り早い」
「だからって、体……嫌じゃないの?」
花音はドアノブに手をかけ、ちょっと派手になった顔で悪びれる様子もなく振り返って言った。
「別に。私、セックス嫌いじゃないし」
返す言葉もなかった。