
「まじで? 鈴原と?」
克はくわえていたパックジュースを口から落とした。
「うん」
「えー、だって鈴原って……」
克の言わんとしていることはわかる。
でも、そのことを身をもって痛感しているのはこの俺だ。
俺は文句あんのかよ、という目で克を見た。
「いや、お前がいいなら、別にいいんだけど……へーえ、そっかぁ」
新学期が始まり、克には一応報告しておこうと思ったけど、あまり多くを語るつもり
もなく、俺はパックジュースをくわえて言葉を封印した。
すでに空になったパックジュースがくしゃっと縮まる。
反対に、ジュースを失った克の口元は緩んでいた。
「そのさ、やっぱ、すごいわけ? テクニックとか」
予想通りの克の質問に、俺は予定通りに頭をパシッと叩いて答えた。

克が懸念するまでもなく、俺と花音の付き合いにはすぐに暗雲が立ちこめた。
俺は夏休みの映画制作で仕送りを使い果たしてしまい、花音は学費の借金を後回しにしたくないからと、毎月学生にとってはありえない額のローンを組んで返していた。
お金のない俺たちのデートは基本的に俺の家。
テレビゲームぐらいはあっても他に特に何があるわけでもなく、ゲームに飽きたら適当にDVDを見て、腹が減ったらコンビニに行ったりピザをとったり、腹が満たされたらなあなあでセックスが始まるといった調子だった。
相変わらず、花音のセックスは最高だった。
テクニックはプロだし、体の相性も完璧だった。
元は一つの生き物だったんじゃないかと思うくらい、溶け合うように俺たちは一つになっていた。
しかし、体を重ねれば重ねるほど、別の感情も積み重なっていった。