
「ありがとう」
ソフトクリームを手渡すと、花音は嬉しそうに俺を見上げた。
舌を出してペロリとソフトクリームのてっぺんの尖った部分を舐める。
「やっぱ地元のが美味しいなあ」
せっかく買ってあげたのに、平気でそういうことを言う。
「地元どこ?」
「ミルク王国」
「地元どこ?」
俺は聞こえなかった振りをしてもう一度たずねる。
「……北海道」
「そうなんだ? 高校んとき修学旅行で行った。いいとこじゃん」
「でも、何にもないよ。ファームはあってもドリームはない」
花音はペロペロと舐めていたソフトクリームの丸くなってきた頭頂部にかぷっとかぶりついた。
「ファームじゃ映画は撮れないか」
「ファームじゃねぇ」

花音は口の周りについたソフトクリームを舌を出して舐めとる。
「北海道だから色白いの?」
「え? どういうこと?」
「だってほら、なんか、北って白いイメージ」
「まあ、沖縄っ子に比べたらそうかもしれないけど」
サクサクとリズムよくコーンをかじる音が、止まった。
唇にコーンくずをつけたまま、花音はソフトクリームをじっとみつめた。
「子供の頃、あんまり外に出なかったの」
「え? 箱入り娘ってやつ? 引きこもりだったの?」
「山崎君、言葉のニュアンスちょっと間違ってるよ。本当に大卒?」
「学歴的には。で、なんで出なかったの?」
「病気だったの。小児喘息。だから体育の授業とかも参加できなかったし、いつ発作がでるかわからないからあまり出歩けなくて、家にいることが多かった」
今の元気そうな姿からは想像できなかった。
でも言われてみれば病的な白さかもしれない。
「友達が遊びに誘ってくれても断ったり、病院でよく学校も休んだし」
花音の人付き合いの下手さの原因がなんとなくわかった気がした。
幼い頃に培われなかったんだ。