
電話をかけて何が悪い。
俺は彼氏なんだ。
受話器の奥でコール音が鳴る。
出て欲しいけど、その隣にもしかしたらどこの馬の骨かわからない男がいるのかもしれないと思うと出て欲しくない気もする。
留守電に繋がるかと思ったけど、留守電にもならず、延々とコール音が鳴り続け、俺は虚しい気持ちいっぱいで電話を切った。
花音に繋がらないなら、携帯の存在なんてもどかしいだけだ。
俺は座布団の上に携帯を放り投げ、仰向けになりため息をついた。
天井に貼ったポスターの中で、ジャン・レノが丸いサングラスをかけて斜め上を見ていた。
サングラスの奥に潜む瞳で何を見ているんだろう。
花音のことを頭から離そうとしてジャン・レノの気持ちを想像してみたけど、結局何も考えられなかった。
浮かんでくるのは花音のことばかり。
花音の大きな瞳、ふっくらとした唇、くっきりとした鎖骨、滑らかな背中、柔らかそうな太もも、細い二の腕に描かれた王子さま。
ベッドの上で発狂しそうになる。
寝返りだけじゃ物足りずに布団を巻き込み腕と太ももで挟む。
悶々というのはこういう状況か。
俺は窓の向こうがほんのり明るくなり始めてもちっとも眠くならなかった。
携帯には相変わらず連絡がない。
冗談だったのかな。
軽い気持ちで言っただけなのかな。
だんだんそんなことを考え始めてしまう。
だったらこのままオナニーでもして眠ったほうがよっぽどすっきりする。
花音の唇の感触はまだ鮮明に残っている。
悪夢から解放されていい夢を見て眠れそうだ。
諦めモードで身をかがめた瞬間、ドアが開いた。