
外灯に照らされる花音の後ろ姿を見つけ、走って強引に腕を掴んだ。
「付き合おう」
俺は息を切らしながら言った。
「俺ら、付き合おう」
花音は眉間に皺を寄せたまま俺を見上げる。
「知ってるんでしょ? 私のバイト」
「うん」
「知ってて本気で言ってるの?」
「うん」
「変わってるね」
「別に、バイトで彼女を選ぶわけじゃないから」
「何で選ぶの?」
「何って……鈴原のたまに笑う顔とか、好きだし、くしゃみの仕方とか、可愛いし、発
想とか、面白いと思うし……上手く言えないけど、そんなんで、よくね?」
花音の腕を掴みっぱなしの手に汗をかきながら、俺はしどろもどろ言った。
男らしくもなんともないへなちょこな告白。
でも、素直な気持ち。
俺は様子をうかがうように花音の顔を見つめた。
花音の口角が見る見るうちに上がっていった。
「……うん。私は、そんなんでいいと思う。私も、山崎君の、演出を考えているときに、
親指で、こう、鼻の頭をさする癖とか、好きだよ」
花音は歯を見せて微笑むと、一歩俺に歩み寄り、背伸びをして俺に軽くキスをした。
「あとで連絡する」
花音はひらひらと手を振って、恍惚で動けない俺を置きざりにした。
ぷるんとした唇の感触だけがいつまでも消えなかった。
