
「かんぱーい!!」
大ジョッキが威勢のいい音を立てる。
テンションは上がりっぱなしで、まだアルコールを全然飲んでいないのにみんなのテンションは最高潮だった。
一人を除いて。
花音を無理やり連れて来たはいいけど、案の定、端っこで静かに飲んでいた。
どう馴染んだらいいかわからずに戸惑っているだけかもしれないけど、どう見ても楽しくなさそう。
自分の書いた作品の打ち上げなのに、さすがに今日はこのままじゃよくないだろう。
俺はみんなの座っている後ろを中腰で通り、花音に近づこうとした。
そのとき、花音の携帯が鳴った。
花音はバックを握って立ち上がり、帰ろうとした。
「帰んの?」
俺も中腰をやめて立ち上がる。
みんなの視線が集まった。
花音は悪びれることなくはっきりとした口調でいった。
「バイト」
飲めや騒げやの宴の席は、一気にお葬式ほどの静けさになった。
軽蔑の目で花音を見る女子、気まずそうに顔を合わせる男子。
摂氏零度以下の冷たい空気にひるむことなく、花音は靴を履き出て行こうとする。
「ちょ、鈴原」
俺が追いかけようとすると、俺の手首を真奈が掴んだ。
「ほっときなよ、あんな子」
そう言う真奈の顔はひどく歪んでいた。
真奈にとったらあんな子かもしれない。
でも、俺に言わせればあんなに魅力的な子はいないんだ。
俺は真奈の手を激しく振りほどいた。
「痛っ!」
真奈の高い声が響く中、俺は宴会場を去る。
「おい、拓郎!」
克の大声も無視して花音を追いかけた。