
撮影最終日に花音は来てくれた。
ラストも夕陽のシーンだけど、予定通りに順調に進んだので、俺も花音の姿を確認する余裕があった。
花音はやっぱりみんなと離れた場所から背伸びをして撮影現場を見ていた。
女子たちの視界に入らないようにしているんだろう。
なんだかちょっと不憫になってくる。
群れないタイプなのはわかっている。
媚び合うだけの友達とかいらないんだって。
それでも、花音の脚本でここまで撮影できたんだし、もうちょっとみんなと馴染んでもいいのに……。
「じゃあラスト、本番行きます」
カチンコが鳴る。
主人公とその彼女が背中を向け合い、土手の中心から逆方向に歩き始めるロングショット。
セリフはない。
でも、それが二人の出した答えというシーン。
どこまでも続く道は一本しかなく、決して交わることはない。
二人は夕陽をバックにひたすら逆方向に歩き続ける。
フレームアウトするまで。
「OK」
俺の声に、安堵の息が漏れる。
「はい、クランクアップでーす。みなさんお疲れ様でーす」
克の大きな声が響き、拍手が沸きあがった。
いつの間に用意してくれていたのか、俺と出演者二人に小さな花束が渡された。
そんなことをしてもらえるなんて思っていなかった俺は、うかつにも目に涙を浮かべてしまった。
「はい、監督、こっち向いてコメントください」
メイキングカメラが俺に向けられる。
「いや、マジ、やばいって」
俺は恥ずかしくてメイキングカメラに背中を向けた。
みんなは笑いながらも拍手し続けてくれた。
これで撮影が終わるんだという実感が急に湧いてきて、それがまた涙を誘った。
克なんかは恥じることなく大声あげてスタッフと肩を組み泣きじゃくっている。
みんなの笑顔と拍手と嬉し泣きの声が俺の心に沁みてくる。
なんだこれ。
この、胸を鷲摑まれる感じは。
今まで生きてきた中で一番快感だった。
これは、クセになる。
はまるわけだ。
映画を撮っていて得られるのは作品だけじゃないってこと。
そんな青春じみたことをこれでもかってほど体験させられた。