
結局花音は一週間ほど学校に現れなかった。
教室ではSMプレイのまま男に監禁説が有力になっていた。
花音は一見Sっぽいけど、実はMだと思う。
周りの会話につられて授業中にも関わらずそんなことを考えていると携帯が震えた。
花音からだった。
しかも画像つき。
俺は花音自身の画像を期待した。
別にエロいのじゃなくて、普通に笑顔のアップとかでいい。
開いて見ると、『できた』というメッセージの下に、笑っている王子さまの画像があった。
やっぱりちゃんと書いてくれていたんだ……。
俺はSとかMとかエロ画像とかを考えていた自分を自分なりに反省した。
王子さまは達成感で満たされているような笑顔だった。
俺は王子さまにつられるように、携帯画面に向かって微笑んだ。
「何にやにやしてんの? エロいメール? 見せて」
克が小声で聞いてくる。
俺は口パクで『馬鹿』と答え、携帯をしまった。

今すぐ花音に会いたい。
会えなくても声が聞きたい。
ありがとうって言いたい。
お疲れ様って言ってあげたい。
それからの授業は本当に長く感じた。
トイレです、と言って抜け出そうとも考えたけど、なんだかんだで恥ずかしいし、克に何か聞かれたら面倒だと思って我慢した。
チャイムと同時に廊下に出て電話をかけた。
コール音が鳴るたびに胸が高鳴る。
でも、何度もコール音が鳴ったあとに聞こえてきたのは花音の艶っぽい声ではなく留守電の機械の声だった。
盛り上がってしまった分、ひどくがっかりしてしまう。
しかたない、とりあえずメールにするか。
もしかしたら書き終えてお疲れでそのまま昼寝をしてしまっているのかもしれない。
俺は花音の無防備な寝顔を思い出し、またにやけてしまった。
実際は俺の知らない男の前で、もっと無防備な姿をさらして破廉恥なことをしているなんてことは、浮かれすぎている俺の頭には浮かんでもこなかった。