
結局具体的な話はできずに、最悪な顔合わせとなった。
俺は花音と話がしたかったから、残って打ち合わせをすると言ってみんなに先に帰ってもらった。
でも疲労感漂うファミレスでは何も話す気にならなくて、とりあえず今日のところは帰ることになった。
並んで歩いていたけど、俺は花音の姿をちょっとでも視界に入れたくて、無意識のうちに数歩後ろを歩いていた。
花音はまだ機嫌が悪いのか、ずっと黙ったまま俺の前を歩き続けていた。
「怖ぇよな、女子って」
後ろから声をかけても花音の返事はない。
「気、悪くした? でもチーム作業だし」
花音は無言でサクサクと前を歩き続ける。
俺は花音が俺を無視するのをいいことに、花音の後ろ姿をここぞとばかりに観察した。
背はそんなに高いほうじゃない。
160センチはないな、156とか158センチぐらいか。
でもバランスよく見えるのは顔が小さいからだろう。
肩幅は狭くて全体的に華奢。
今日は緩めのチュニックを着ているからわからないけど、デニム姿を見た感じではウエストは適度にくびれている。
お尻は小ぶりだけどキュッと上に上がっていて本当に猫みたいだ。
そしてなんといっても肌が綺麗。
学校ではあまり露出の高い格好をしていないけど、鎖骨らへんや、デニムの隙間、サンダルを履いた足元、あまり化粧っ気のない顔はいつも透けるような白さ。
子供の頃から日焼けをしていないんだろうか。

そもそも花音って出身どこだ?
俺は花音のこと、まだまだ全然知らない。
「……鈴原ってさあ、」
「しっ」
再び声をかけると、花音は振り返って口元の前に人差し指を立てる『しーっ』のポーズをとった。
俺が素直に従って質問をひっこめると、花音は後ろ向きに歩きながら今度は頭の周りに両手を開いてふわふわとさせている。
「まとまってきた、書きたいの」
「え?」
「面白いの書いて、あの子らのぺらぺらとよく動く口、黙らせる」
花音は戦闘モードのスイッチが入ったみたいで、自信満々の笑みを浮かべている。
「……怖ぇよな、女子って」
俺はもう一度しみじみと言った。
「よし、今から打ち合わせしよっ」
花音は後ろ歩きをやめて、ぴょんと跳ねて俺の隣に並んだ。
「今から? どこで?」
花音は顎に人差し指をあてて目線を右上に上げ、ちょっと考えている表情をした。
そのあと悪戯っ子のように微笑んで、顎に置いていた人差し指で俺の鼻のてっぺんを押さえた。