
学校内はトイレの横に備えられた狭い喫煙スペース以外、教室も打ち合わせルームもロビーも禁煙。
「タバコ吸えないと正直きつい」という正直者の花音のために、近くのファミリーレストランでスタッフ打ち合わせをすることにした。
みんな自分の作品も手伝って欲しいから人の作品も手伝う。
声をかけると数日で十人ほど集まり、学生の創作意欲の強さに他人事のように感心した。
しかし四人いる女子は花音を見て四人とも露骨に不満そうな顔をし、その中でも俺によく話しかけてきていた真奈(まな)は遠慮なく不満感を表情で表していた。
そんな真奈の向かいに座り、花音はぴくりとも微笑まなかった。
この前の凛子のときの笑顔が幻だったのではないかと思ってしまう。
十九歳の真奈の前で、二十一歳の花音はこれまた遠慮なくタバコを吸う。
俺はただ苦笑いを浮かべるばかりだった。
「拓郎君が脚本も書くんだと思ってた」
先制攻撃という感じで真奈が目を伏せながら言った。
「どうせみんなで作るなら、面白いものにしたいと思って、俺が鈴原にお願いした」
花音は言葉を発さずに絶え間なく白い煙を吐き続ける。
真奈は顔の前に手をかざして堂々と煙を払う。
苦笑いは俺だけでなく、克を含めた男子スタッフからもこぼれだした。
空気が悪いのは喫煙席のせいだけではない。

「じゃあ、脚本を見てから参加考えてくれてもいいよ」
俺が精一杯下手に出てそう言うと、それは逆に自分が大人気ないと思ったのか、真奈はちょっと下唇を尖らせたあと、花音の煙を押し返すくらいの大きなため息をついた。
「別にいいんだけど。ただ、鈴原さんと一緒にやってて一緒の人種に思われたくないっていうか。あと、スタッフとごたごたとかやめてよね。やったやらないとかは撮影終わってからにして」
どうしてこのクラスの女子はこうも正直で気が強いんだろう。
男子スタッフは顔を合わせ、場をなだめるかのようにお互いの肩を叩いたり無駄に笑ったりした。
花音はやっぱり何も答えずに、短くなったタバコをこれでもかというくらいに強く灰皿に押し付けていた。