

イベント終了後、俺は事務局前で石田さんが出てくるのを待った。
体温が上がりっぱなしで下がらない。
知恵熱のようだ。
今、俺の中で何かが猛烈に発達しているんだ。
ドアの前を落ち着きなく何度も行ったり来たりすること数十分。
ドアが開き、腰を低くしてお辞儀をしながら石田さんが出てきた。
「あのっ」
俺はとりあえず声をかけた。
石田さんは特に驚くことなく、背筋を伸ばして俺を見つめる。
俺は熱くなった手にぎゅっと力を込め、初めての告白のような心境で口を開いた。
「あの……」
言え。
言えよ、俺。
「その、俺、映画撮りたいって思いました」
言えた……。
俺は全身からふっと力が抜けていくのを感じた。
石田さんは微動だにしない。
「すみません、なんか、それだけ、伝えたくて」
石田さんはその場でにやっと微笑んだ。
「感じちゃったか?」
「え?」
「撮りなさい。撮りたいもんとって、持ってきなさい」
石田さんはそれだけ言って踵を返した。
その後ろ姿を俺は尊敬の眼差しで見送った。
石田さんが歩いていくこの廊下の向こうに、俺の進むべき道が見えた気がした。