
見てよし。
俺の中でGOサインが出た。
俺は立ち上がり、花音が座っていた机の横に立ち、黄色いノートを手にとった。
リアルに胸の鼓動が高鳴った。
小学生時代、放課後に好きな女子のリコーダーをくわえるようなそんな卑劣な行為をしたことはないけれど、そんな外面的なものではなく、内面的なものを盗み見てしまうようで、もしかしたらリコーダー以上に興奮するシチュエーションなのかもしれない。
俺は厚めの表紙を開き、ノートを捲った。
紙がぱらりと舞うときに起こる微細な風が、さっきまで俺を支配していた安っぽい好奇心を一瞬にして吹き飛ばした。
鼓動は別の意味で速度を増した。
俺はノートの中身に釘付けになり、しばらく息をすることも忘れていた。
単なる授業内容の板書ノートじゃない。
花音のアイデアノート。
そこに書かれていたのは、俺が逆立ちしても出てこないような斬新な設定。
そのままキャッチコピーになりそうなインパクトのあるセリフ。
数行読んだだけで先の展開が気になるストーリー。
ところどころイラストも描かれていて、それがまた独特の世界観を演出している。
なんだよ、これ。
花音の中身、こんなことになってんのかよ。
あのアンニュイな外見に騙されている気分になった。
認めたくない微熱のような嫉妬と興奮で全身が火照る。
そのときドアが開く音がし、反射的にノートを閉じた。
窓からの夕陽を浴びてオレンジ色になった花音が立っている。
長い睫毛を備えたアーモンド型の大きな目が、俺の手にしがみつくように握られている黄色いノートをまっすぐに捕らえた。