
#15「Love」-1
仁志さんから久しぶりにメールが届いた。その内容を読んで、思わず驚きの声を上げた。
Anaのお父さんが入院したらしく、彼女は日本への留学を辞退したらしい。
まさかこんな展開になるなんて、想像しなかった。Anaは日本での生活について目を輝かせて話していたし、仁志さんはAnaの生活をサポートするって意気込んでいたのに。
短いメールは、『ひとまずは遠距離しながら、これからのふたりのことを考えます』と締めくくられていた。煙草をくわえて一点を見つめている仁志さんの姿が目に浮かぶ。
ただ淡々と事実だけが書かれているメールは、仁志さんが落ち込んでいることを十分に物語っている。

――遠距離ってなんなんだろう。
元々近くにいたふたりが、やむを得ない事情で別々の遠い場所で暮らさなければいけなくなったけれど、またいずれ近くに戻るから関係を続けましょう、って言うなら理解できる。期間が決まっているなら我慢できる。だって時間さえ経てばまた近くに戻れるって保証があるんだから。
憎むべきは距離。闘う相手は自分自身。やり過ごす対象は時間。
けれど元々遠くにいたふたりが、縁があって恋に堕ちてしまって、少しの甘い時間を共有して、また別々の遠くの場所に戻らなければいけない場合、それは決して簡単じゃない。元々の生活の場所が遠いんだから。憎むべきは距離。闘う相手は自分自身。決定的に違うのは時間をやり過ごしても意味がないということ。近づこうと努力しない限り、永遠に距離は縮まらない。
寂しくて膝を抱える夜、隣に誰もいない。嬉しくて抱き合って喜びたい時、隣に誰もいない。悲しくて頭をなでてほしい時、やっぱり隣に誰もいない。それが遠距離恋愛だ。
“I’m sure I can’t do it.”
仁志さんにメールの返事を書こうと思ったけれど、励ましの言葉が思いつかなかった。
「大丈夫だよ」なんて軽々しく言えない。「頑張って、ふたりなら乗越えられるよ」なんて無責任なこと言えない。私はため息一つだけついて、パソコンの電源を落とした。