
#08「Library」-1
最近、時間の流れ方について考える。
瞬く間に時間が過ぎる、とよく言うけれど、ニューヨークでの暮らしはまさにその通りだ。
三か月という短期留学で、「帰国」という動かせないゴールが決まっているからかもしれない。
ゴールなく何となく生きていた日本での生活と、ゴールに向かって悔いのないように生きているニューヨークでの生活の重みは違う。
一分一秒がかけがえのないものだと実感できる。
十月にひとり泣きそうな顔でニューヨークを歩いていた私は、今は大切な友達と笑いながらニューヨークを歩く。
たった一か月ちょっとで人が変われるなんて知らなかった。
いや、人が変わるのに一か月もいらないのかもしれない。
本当は変わろうと思ったその瞬間から、もう既に変わり始めているのかもしれない。

大都会の喧騒から遮断された異世界。心なしか空気が凛としているようだ。
大きなスタンドグラスを見上げていると、図書館に来たのが一か月以上前だなんて思えない。
今にでもAdamが現れる気がする。
――応援するけどさ、あまり期待しない方がいいよ。
もしも、万が一、その人に再会できたとして、彼は百合のこと覚えているか分からないし、それにすごいダメな人かもしれないじゃん。
聖子の言葉が頭をよぎる。確かに聖子の言うとおりだ。
もしも再会出来たとして、その人がいい人とは限らない。期待しすぎると傷つくのは自分だ。
恐る恐る階段をのぼり、大学生らしき人たちが勉強している部屋へ足を進める。
日本人はいない。Adamもいない。
私は空いている席に腰かけて周りを眺めてみる。
金髪、茶髪、黒髪、白い肌、黒い肌、青い目、茶色い目、緑の目、黒い目。
ニューヨークには本当にいろんな人がいるんだ。
一生懸命Adamの顔を思い出そうとしたけれど、はっきりと思いだせない。
これでどうやって探そうって言うんだろう。私は情けなくてため息を漏らした。