
#04「Leaf」-1
行きたくない。体が重い。立ち上がれない。
寝室のベッドであおむけになりながら、何も考えたくなかった。
分かってる、これは完全な登校拒否だ。

入学の日から一週間が経った。
始めから終りまで英語だけの授業では、先生が言っていることをきちんと理解出来ない事もしばしばあった。
聞かれた質問に的外れなことを答えることもあった。
何より辛いのが、コミュニケーションの授業。
机を移動させて他のクラスメイトとペアになり、与えられた文法を使って互いに質問をする。
昨日は比較級。最悪だった。
私とペアになったのはベトナム人の二十代の女の人だった。
その女性――ハンが言った。
” Viet Nam food is better than Japanese food.”
悪気がなさそうにサラッと言ってのけたけど、彼女は喧嘩を売っていたのか?
それに対して私は何を言えばよかったんだろう?
私が人よりも日本料理を愛してやまないというわけではないけれど、それにしたって日本人の私に向ってベトナム料理の方が美味しいなんて主張されても返事に困る。
それからハンはこうも言った。
“I am happier than you.”
そんなこと言われても……。
思わず “That’s great!”って言ってみたけれど、きっと心がこもってなかったんだろうな。
何であんなに自信たっぷりなんだろう。
その自信はどこから生まれるんだろう。
単純にお国柄なのか、それとも日本人は自信がなさ過ぎなだけなのか。
ついていけなかった。
そんな不毛なことを自信たっぷりに言うクラスメイトにも、それに対抗しようと声高々にお国自慢を始めるクラスメイトにも。
日本人の聖子さんはそんなクラスメイト達を遠くから笑顔で見ていた。
聖子さんはヨーロッパの男性から”Seiko, AISHITERU”とよく声をかけられていた。
それを彼女は”Me too.” と適当にかわしていた。
それくらいクールなのが丁度いいのかもしれない。